■12月3日

*アニメ準拠ですが、アニメでまだ放送されてない内容です。
その為、ゲームの内容で補完してます。
更に、ゲームの設定と一部変更してある部分もあります。
明確なCP要素はありませんが、花主っぽいかもしれません。
ネタばれありです。ゲームをクリアされてない方はご注意下さい。


家へ戻り自室へと入る。
家の中にも部屋の中にもクマの姿はなかった。
家に帰るまでに、近所を捜してみたが、クマの姿はどこにもない。
溜息を一つ吐いて、陽介はベッドへと腰掛ける。
そのまま寝転がり天井を見上げた。
ぼうっと今日の出来事を思い出す。
菜々子の容体が急変して、心臓が止まって――そう、確かに冷静じゃなかった。
そりゃそうだろうと陽介は思う。
あんな小さな女の子があんな目にあって、冷静でなんていられる筈がない。
あんな時でも冷静に対応出来るあいつの方が――そこまで思い、陽介は溜息を吐きだす。
なんだってあいつは、悠は、あんな時でも冷静で居られるのか。
悠が菜々子の事を本当の妹のように可愛がっているのは知っている。
転校してきた当初に比べれば随分と感情が表情に出るようになったとは言え、それでもあまり表情は変わらない。
だから分かり難いが、菜々子に話掛ける時の悠は、声も話し方も本当に優しくて。
基本的に悠は誰にでも優しい奴ではあるが、菜々子に対しては格別に優しい。
本当の兄妹以上に兄妹らしいのだ、あの二人は。
そう言えば、クマにも優しいよな、と陽介は思う。
クマの精神年齢が低いからかもしれないが、そう言えば悠のクマに対する態度は菜々子に対するそれに良く似ている。


「なあ、クマ」


思わずそう声を掛けてしまい、そう言えば居ないんだったと改めて思う。
半身を起して部屋を見渡して――この部屋こんなに広かったっけか、と思う。
いつもと変わらない自分の部屋。なのに、妙に広く感じた。
――そう言えば、悠がそんな事を言っていたなと思い出す。
菜々子が誘拐されて以来、堂島家には悠一人しか居ない。
気になって、大丈夫かと聞いた時返ってきたのは「家が広い」という言葉だけだった。
成程こういう事なのか、と実感する。
部屋が広く感じるのは、居るはずの存在がないからだ。
クマがこの家に居候するようになってからそれ程時間は経っていない。
悠が堂島家で菜々子達と過ごした時間より、短い。
それでも、広いと感じる。
在るはずの存在がない事が、寂しいのだと、だから部屋が広く感じるのだと、知った。
今思い出せば「家が広い」と言った時の悠は無表情で、転校してきたばかりの頃のようだった。
いや、あの時だけじゃない、菜々子が誘拐されて以来ずっと、悠はそんな感じじゃなかったかと思う。
違和感があったのだ、ずっと。
ただ、陽介にも余裕がなかった。
先輩をテレビの中に落とした犯人がやっと分かって、そしてやはり菜々子の事が心配で。
様々な感情が溢れだしそうで、それを抑え込むのにも必死で。
だから気付けなかった。
生田目の病室で「落ち着け」と声を荒げた悠を思い出す。
あんな悠を見たのは初めてだ。
本当にあいつは冷静だったんだろうか。
そんなはずがないと今更ながら思う。
大切な妹があんな目にあって落ち着いて居られるはずなどない。
本当に冷静だったなら――あんな表情をしているはずがない。
まるで感情そのものがないかのような、無表情。
それがどういう事なのか、何故今まで気付けなかったのか。
携帯を取り出して、悠の携帯へと電話を掛ける。
何度か掛けて見たが応答はなく、留守番電話に切り替わってしまう。
少し考えて、堂島家へと電話を掛けて見る。
だがやはり、応答はなかった。

ベッドから下り、部屋を後にする。
母親に、悠が今家に独りだと言う事と、連絡が取れないから家に行って見ると、今日は帰らないかもしれないと告げる。
何事か少し考えていた母親は、少し待つように言い、そして陽介におにぎりを持たせてくれた。
陽介も夕食をとって居ないし、悠も独りなら食べてないんじゃないかという事らしい。
礼を言って、陽介は家を後にした。
クマの事も気になるが、悠の事も気になる。
ずっとあいつはこの一ヵ月程、誰も居ない家でどうしていたのか。
八十稲羽に来てから堂島や菜々子と過ごした思い出の残るあの家で、独りでずっとどんな思いでいたのか。
転校してきたばかりの頃のあいつは、何を考えているか分からなくて。
クマの中身がないという事実を目の当たりにしても動じる事もなく。
陽介の影と対峙して、誰にも知られたくないような本音の一部を垣間見ても、何も変わらなかった。
修学旅行や文化祭と言ったイベント事は全力で楽しんで、お陰で陽介はそのたびに振り回されて、大変だけどそれでも楽しかった。
変な奴だけど、それでも頼りになる相棒だった。
親友だとそう思える相手だった。
それなのに、何故気付けなかったのか。


「何で何も言わねえんだよ、あいつは」


走りながら、思わず呟く。
そう言えば、一条や長瀬も心配していたっけなと思い出す。
菜々子が誘拐されて以来、悠は平気な風を装ってはいたけれど。
事情を知っている陽介達はもちろん、一条達も何となく悠の様子が可笑しい事に気付いて居て。
何かあったのかと陽介に尋ねたりもした。
菜々子と堂島さんが入院して今あいつが家に独りだって事だけは、話したのだ、一条達に。
部活に出ている間は、一条と長瀬があいつの様子を見ていると、そう言っていたのを思い出す。
だが結局悠は、一度も誰にも弱音を吐く事はなかった。
部活にも出て、学校へもちゃんと来ていた。
あまり親しくない奴等から見たら、普段と何も変わらないように見えただろう。
早く、と気が急くからか、堂島家は普段より遠く感じる。
走り続けていい加減限界かもしれないと思った瞬間、やっと堂島家に辿り着いた。
はあ、と玄関の前で荒い息を吐きだす。
どうにか呼吸を整えて、呼び鈴を押した。

呼び鈴を押してしばらく待ってみるが、中から反応はない。
堂島家の近所の家からは漏れている明かりが、堂島家からはない。
もう一度呼び鈴を押してみる。
だが、やはり反応はなかった。
もしかしたらまだ帰って居ないのかと思う。
だが陽介がこの家に来るまでの間に、悠の姿は見掛けなかった。
陽介と別れた後、この家に戻るには、今陽介が走ってきた道を通って来るはずだ。
真夜中と言う程の遅い時間ではないが、夜に分類される時間。
そんな時間に大声で悠を呼ぶわけにもいかず、陽介は再び呼び鈴を押す。
呼び鈴をおしても開かない扉に、不安が押し寄せて来る。
まだ家に戻ってないんじゃないかと、家に戻る途中で何かあったんじゃないかと。
家の中には居るが玄関まで出てこれない状況なんじゃないかと。
不安に押し潰されそうになって、嫌な想像しか浮かんでこない。
それでもと思い呼び鈴を押し続ける。
頼む、出てくれ! そう願いながら。
何度かそれを繰り返してやっと、堂島家の玄関が静かに開いた。
ほっと陽介は安堵の息を吐く。
扉を開けた悠は、陽介の姿を見て驚いた様子で言葉を紡いだ。


「陽介。どうしたんだ?」
「どうしたんだ、じゃねえよ! お前、何やってたんだよ」
「……何も」


陽介の怒りなど何も分かって居ない様子で、平然と返って来る答え。
普段通りに見える悠の態度。だが、明らかに違和感があった。
深呼吸して落ちつけて、陽介は言葉を紡ぐ。


「携帯に何度も電話したんだぞ。呼び鈴も何度も押した。……何かあったのかと思っただろう」
「悪い。気付かなかった」
「……」
「とにかく中に入れ。中で話そう」


頷いて、陽介は中に入る。
背後で扉が閉められて、悠が居間の方へと向かうのが見えた。
それを追って、居間へと向かい掛けて――部屋へと入る瞬間に、悠の足が躊躇したように止まるのが見える。
それもほんの僅かな時間で、何事もなかったかのように中へと入って行こうとする悠を、陽介は腕を掴み引き留めた。


「陽介?」


驚き、陽介の名を呼ぶ悠に言葉を返す事はせずに、陽介は悠の腕を掴んだまま二階の悠の部屋へと向かう。
悠が入ろうとして躊躇した理由が、陽介には分かった気がした。
陽介が悠の家へと遊びに来れば必ず「いらっしゃい」と迎えてくれた菜々子は今はこの家には居ない。
居ないのに、菜々子がいつもテレビを見ていたそこには、まるで菜々子が居るようで。
陽介でさえそう感じるほどに色濃く残る面影。
ならば、四月からずっとこの家で一緒に過ごして来た悠にとってはそれ以上なのだろう。
二階の悠の部屋なら良いというものでもないだろうが、まだマシだと思う。
悠の部屋へとつき中に入り、陽介は溜息を吐き出した。


「どうしたんだ? 陽介」


何故そんな事を言うのか。
何故こんな時なのに人の心配をしているのか。
どうしたんだと、大丈夫なのかと心配そうに言われて、怒りに似た感情が湧き上がる。
それをどうにか堪えて、陽介は言葉を紡いだ。


「これ」


そう言って悠に差し出したのは、おにぎりの入った袋。
素直にそれを受け取って、けれど中を見ようとはせずに、悠は不思議そうに言葉を紡いだ。


「えーと、なに?」
「何も食ってないだろ、帰って来てから」
「ああ、うん。多分」
「多分ってなんだよ」
「……っ、」


袋の中を見た悠が、息を呑んだのが分かる。
悠がその場に崩れ落ちるように座り込むのが見えた。
驚き陽介は悠に近寄る。


「おい、悠。どうしたんだよ」
「……」


陽介の問いには答えずに、何でもないとでも言うかのように、軽く首を左右に振る。
大丈夫だとでも言うかのように微笑まれて、それがあまりにも痛々しくて――怒りに似た感情に呑まれそうになるのを必死に堪える。
真っ直ぐに悠を見据えて、言葉を紡いだ。


「何でもないはずないだろ」


静かな怒りを滲ませた声に気付いたのか、悠が驚いたように陽介を見る。
何か言葉を紡ごうとする悠を遮って、陽介は言葉を続けた。


「クマの奴、どこにも居ないんだ。捜してみたんだけど、居なくて」
「……クマはきっと帰って来る」
「ああ、分かってる。そうじゃなくて。クマが俺の家に居候するようになってそんなに時間経ってない筈なのに、あいつが居ない部屋は広いんだ」
「……」
「なあ、悠。お前言ってたよな。家が広いって」
「……ああ」
「それがどういう事なのか良く分かった。お前一ヵ月もこんな状態で居たのかよ。何で何も言わないんだ」
「……俺なら」
「平気とか言うなよ。平気なはずないだろ!」


思わず声を荒げれば、驚いたのかびくりと悠の身体が揺れたのが見える。
ああ、珍しいななんて僅かに残っている冷静な部分で思う。
驚いたような表情でじっと陽介を見る悠を見据えて、言葉を続けた。


「そんなに俺は頼りないのかよ」
「……そんな事は」
「なら、何で何も言わないんだよ。お前さ、皆がどれだけ心配してるか分かってるか? こんな時くらい仲間を頼れよ。俺を、頼れ」
「……」


何か言い掛けて、結局悠は何も言わない。
仲間を、陽介を信頼してない訳じゃないのは分かっている。
多分分からないんだろう。
菜々子と堂島の親子のすれ違いがあった時、悠の両親の話を少しだけ聞いた。
仕事人間で殆ど家に居ないと言う事。
料理が出来るのは、一人で過ごす事が多かったせいで、家事全般一通り出来るらしいと言う事。
親子関係は悪くはないが、菜々子の寂しさは良く分かるんだと言っていたのを思い出す。
菜々子も年齢の割に大人びていて、我儘を言う事も甘える事もあまりない。
それは多分、甘え方を知らないからなんだろう。
悠も多分同じだ。
悠は、仲間を信頼してない訳じゃない。頼りにしているつもりでいる。
だが、陽介や仲間達から見れば、全然足りないのだ。


「辛いなら辛いって言えって。何でも聞くから」
「……陽介」


陽介の名を呼んだきり、悠は黙り込んでしまう。
躊躇うような仕草を見て、陽介は悠が話す気になるまで待つことにした。
どのくらい時間が経っただろうか、悠が深い溜息を吐く。
一度俯いて、そうして真っ直ぐ陽介を見据えて言葉を紡いだ。


「菜々子が居なくなった後、冷蔵庫に小さいおにぎりがあったんだ」
「……」
「俺がおじさんに連れて行かれるのを菜々子も見ていたし、だからきっと、俺とおじさんが帰ってきたら食べられるようにって作ってくれたんだと思う。陽介が持ってきてくれたおにぎりを見てそれ、思い出した。いや、忘れた事なんてないんだけど、な」
「……そうか」


それ以上何も言えなかった。
忘れた事なんてないというのは本当だろう。
だから、悪い、とは言わない。
たとえ、陽介が持ってきたおにぎりが切っ掛けで思い出したんだとしても、悪いと思わないようにする。
そう思えばきっと、悠はそれを察して逆に心配するだろうから。
ふぅ、と悠が息を吐き出す。
再び悠が話始めるまで、陽介は何も言わずに待っていた。


「……俺が、悪いんだ。菜々子があんな事になったのは、全部、俺が……」


しばらくして吐き出された言葉。
俯き、何かに耐えるような悠の姿は、陽介が始めて見るもので。
いつだって冷静で、頼りになるリーダーの姿はそこにはなかった。
「そんな事ない」と言うのは簡単だ。
だが、その言葉を言ってはいけない気がしたのだ、何故なのか分からないが。
再び訪れる沈黙。
重苦しい沈黙に耐え切れなくなりそうだと思った頃、悠が再び言葉を紡ぎ始めた。


「俺宛ての、差出人も宛先も書かれていない手紙は二通目だったのに。だからあれが以前と同じようなモノだと分かっていたのに俺は、おじさんの前で開けてしまったから、だから」


届いた二通目の脅迫状を、堂島の前で開けたという話は陽介も聞いていた。
ずっと疑われていたのだと言う事も、確かその時に聞いたのだ。
疑われていたと言っても犯人だと思われていた訳ではなくて、事件に関わっているんじゃないかと言うもののようだが。
堂島さんは悠の事が心配だったんだろうなと、それを聞いた時陽介は思った。
確かに、疑われている事も分かっている状態で、堂島の前で脅迫状を開けてしまったのは不用意だったのかもしれない。
堂島の前で開けなければ、悠が拘束される事もなく、菜々子の誘拐を防げた可能性はある。
だがそれはあくまで可能性だ。
悠が自分を責める気持ちは分かる。
陽介が悠の立場なら同じ事を思っただろう。
それでも、悪いのは悠じゃないと言える。
だがそれを言った所で悠が納得するはずがない事は分かっているから、陽介は何も言わない。
その代わり、それ以上言葉を紡ぐ事が出来なくなってしまった様子の悠を、抱き締めた。
驚いたのか、陽介の腕の中悠が硬直する。
しばらくして、ふぅと息を吐き出して、悠は言葉を紡いだ。


「こういうのは女の子にしろって言ったの、陽介だろ」
「あの時のお前の気持ち、今なら良く分かるわ」


陽介の胸の辺りから聞こえたくぐもった声にそう答える。
悠から言葉が返って来る事はなかった。
その代わりに聞こえて来たのは、堪え切れずに漏れる、小さな嗚咽。
ぎゅっと陽介の服を掴む、感触。
声を殺して泣く悠を、陽介はそれ以上何も言わずに抱き締めていた。

ずっと自分を責め続けていたのかと、泣く悠を見下ろしながら思う。
そんな素振りを仲間の前で悠が見せる事はなかった。
菜々子の面影の残るこの家で、ずっとそんな事を思っていたのかと思う。
一ヵ月近く、ずっと独りで――。
何故もっと早く気付けなかったのかと、思う。
様子が可笑しい事には気付いていたのに。
「一人は慣れている」そう悠が言ったのはいつだったか。
陽介が直接聞いた言葉だったのかそれとも、仲間の問いに答える言葉を聞いたのか、良く覚えていない。
あの時「家が広い」と言う言葉の意味に気付いていたなら、もう少し早くここに来れたのにと思う。
泣く事で昇華出来る思いがある事を、陽介は良く知っている。
話す事で楽になる事がある事も、知っているから。

そんな事を思いながらふとテーブルへと視線を向ければそこには賞状の様なものがある。
思わず手を伸ばしてそれを取れば、気付いたらしい悠が顔を上げた。


「ああ、それ。前に菜々子が言ってただろ。テストで一番になったらプレゼントあげる、って。それだよ。……書き掛けだけど、な」
「……」


いつからか悠はいつも学年トップだった。
今回も当然そうだった。
菜々子と約束したから、一番にならないと。と言っていたのを思い出す。
あの時、いつもそうだろ。と返したのは陽介だった。
悠が菜々子をどれ程大切に思っているか、陽介は良く知っている。
陽介だけじゃなく、特別捜査隊の仲間達皆が、知っている事だ。
シスコンだなんて言われるほどに、悠は菜々子を可愛がっている。
何も言えなくて、手に持っていた賞状をテーブルに置いて、再び悠を抱き締める。
「おい」と抗議の声が上がったが、無視することにした。
そうじゃなければ、陽介も泣きそうだったから。
何かに気付いたのか、悠の両手が陽介の背に回される。
宥めるように軽く叩かれて、溜息を吐き出す。
人の心配してる場合じゃないだろうと思ったが、それを口にする事はなかった。
陽介自身、クマが居なくなって不安もあったから。
伝わって来る体温が心地いい。
しばらくの間そうして過ごして――そして陽介はこの日、堂島家に一泊した。

何でこんな事になったのかと、しっかりと陽介に抱きつき眠る悠を見て溜息を吐く。
男二人が寝るには明らかに小さい布団に、陽介は悠と共に寝ていた。
ちゃんと二組の布団が敷かれているにも関わらず、だ。
何となく寝苦しくて目が覚めて、見たらこんなことになっていたのだ。
隣の布団で寝ていたはずの悠が何故か、陽介の布団の中に居て、陽介は悠の抱き枕になっていた。
引きはがせばいいのだろうけど、一ヵ月近くずっとこの家で独りで居たのかと思うと、出来なくて。
かと言って、こんなのを見てしまったらもう一度眠る事も出来なくて。
はあ、と陽介は溜息を吐き出す。
何でこんなことになったのかと、もう一度思う。
だけどまあ、仕方ないかと思っていた。
眠れる気はしないが、伝わる体温は心地良かった。

まだこれからやらなければならない事はある。
生田目の本心も、悠に脅迫状を送り付けた人物も、分からない。
どんな結果が出るのか、現時点では想像もつかない。
だがそれでも、やるしかないのだ。
真実へと辿り着く為に。


「つーか、苦しいんですけど」


ぎゅーっと結構な力で抱きつかれて、息苦しさを感じる。
しっかりと陽介に抱きついている悠を見て、陽介は溜息を吐く。
仕方ないかと思い、少しでも眠れればと目を閉じた。



END



2012/02/28up