それぞれの思い


右手腱鞘炎のためPCのキーボードが打てないので、スマホからSS投稿。

GE2RBの、ジュリウスが離脱した理由が分かった後の、ソーマとリンドウ+GE2主人公。

GE2主人公の名前は、漫画版の神威ヒロです。

続きからどうぞ

 

エレベーターを降り、ロビーに足を踏み入れる。
微かに聞こえてきた声に、ヒロは足を止めた。
珍しく人気のない極東支部のロビー。
聞こえてくる声は、リンドウとソーマのものだった。
ヒロがここに来るまでロビーにはリンドウとソーマしかいなかったせいか、二人の話しが聞こえるギリギリの位置に移動しても、こちらに気づいた様子はない。
話しが聞こえる位置に移動した理由は、ジュリウスの名前が聞こえたからだ。
ジュリウスがブラッドを離脱した理由を知り、納得はした。
けれど、同時に憤りもした。
それは、ヒロ以外のブラッドの仲間も同様で、だからこそ、二人の話しを聞きたくなったのだ。
ラウンジに行く予定を変更して、ヒロは気配を殺し二人の話しに耳を傾けていた。

「残された者の思いは、考えないのか」
ソーマの問いに、リンドウは少し考えてから言葉を紡ぐ。
「ブラッドの元隊長、ジュリウスが離脱した理由のことか?」
「ああ、お前なら分かるだろう。同じ様な事したからな」
ソーマの言葉に微かに笑い、リンドウは答える。
「あの時は他に方法がなかっただろ。狙いが俺だってのも分かってたしな。でもまあ、分からなくはないな」
「……」
「残された者の思いを考えない訳じゃない。それ以上に優先したい思いがあるってだけだな」
リンドウの言葉にソーマはリンドウを睨むように見て言う。
「考えてないだろ。自分の思いを優先しただけだ」
ソーマの言葉にヒロは思わず大きく頷く。
途端に気配に気づいたらしい二人に見つかった。
「いつから居た?」
ソーマの問いにヒロは二人にちかづきながら答える。
「ラウンジに行こうと思って来たら、隊長、あ、ジュリウスの名前が、聞こえたから、つい」
「まだ、ジュリウスを隊長って言うんだな」
おかしそうにリンドウに言われ、ヒロは苦笑する。
ヒロにとってジュリウスはどうしたって隊長なのだ。
今は、自分が隊長だってのは理解している。
それでもどうしてもそれだけは抜けないのだから仕方がない。
「自分の思いを優先しただけってのは、まあ、そうだな。けど、誰だってそうだろ? だから、それでいいんじゃないか?」
最後の言葉はヒロに向けられたもの。
ジュリウスを連れ戻す。
その思いは変わらないが、ジュリウスの真意が分かって以来ほんの僅か揺らいではいた。
出会ってそれ程経ってはいないが見抜かれていたらしい。
ソーマを見れば、こちらもそのリンドウの言葉に当然と言うような顔をしていて、そんなに自分は分かりやすいだろうかと思う。
そんな事を思いつつずっと思っていた事を言葉にする。
「それぞれの思いがあるのは分かりますけど、一言言って欲しかった。なんで一人でやろうとするんですか」
それはジュリウスに向けたものであると同時に、リンドウに向けたものでもあった。
詳しくは聞いていないが、多少話しは聞いていたから。
「どうなんだ? リンドウ」
ニヤリと笑ってソーマが問う。
「どうにも分が悪いな。続きは、ジュリウスが戻ってきたらにしよう」
ジュリウスが戻ってくるのが当たり前の事のように言うリンドウに、救われる。
自分は隊長で、だから皆の前で弱音は吐けない。
それでも不安になることはあってーーそれが少し和らぐ。
「ならこっちは、ブラッドの他の仲間も呼んでくるか」
楽しげに言うソーマにリンドウは「人数が合わない」だのと言っている。
どことなく楽しげに言い合う二人を見て、ヒロもつられる様に笑った。
ブラッドの皆とジュリウスを加えて話せる日は、きっともう直ぐ。

 

 

コメント