夢の残照 その後

夢の残照の、その後の話を小ネタで投下します。

ギャグですかね、これは。

部屋に入ってから翌朝くらいまでを簡単に。

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ソファに座り、部屋に戻る途中自動販売機でソーマが買った缶コーヒーを飲みながら、時折会話を交わす。

ソーマは元々口数が少ないし、リンドウも饒舌な方ではないから、二人でいる時はいつもこんな感じだった。

今更取り繕う必要もないから、リンドウもわざわざ話題を探して話を振る事もない。

会話は無くとも、お互いに気まずくなることもなく、部屋の中は穏やかな静寂に支配されていた。

どのくらいの時間が経っただろうか、リンドウはふと、右肩に重みを感じてそちらへと視線を向ける。

見れば、缶コーヒーの缶を手に持ったまま、ソーマがリンドウの肩に凭れかかって眠っていた。

そっとその手から缶を取って、テーブルへと置く。

じっと、リンドウの肩に凭れかかって眠っているソーマを眺めて、リンドウは溜息を吐き出した。

喜んで良いのか悲しんで良いのか分からないとリンドウは思う。

二人きりで部屋にいる状態で、こう無防備に眠られてしまうのも、何となく複雑だ。

ソーマがリンドウと同じ想いを持っているというのが勘違いじゃないかと思ってしまう。

でもまあ、無駄に警戒されるよりは良いかと思う。

とは言え、夜明けまでそれ程時間がないとは言え、この状態で朝まで過ごすのは流石にキツイと思う。

何とも想っていない相手ならば良いが、そうではないのだから。

だが、ソーマをベッドへと運んで寝かせるのも、何となく勿体ない気がする。

「まあ、このままでいいか」

考えるのが面倒になって、そう結論を出す。

ソーマが凭れかかっている所から伝わる温もりのお陰か、眠れそうな気もするから。

そう思いながらリンドウも目を閉じた。

                     ■ ■ ■

翌朝。

目が覚めて、右肩に感じる重さに、一瞬戸惑って、直ぐに思い出す。

見れば、夜眠った時と同じように、ソーマはリンドウに凭れかかるようにして眠っていた。

「ソーマ。起きろって。朝だぞ」

眠っているソーマの体を軽く揺すってそう声を掛ける。

鬱陶しそうに眉間に皺を寄せて、ソーマの体を揺するリンドウの手を払う。

「朝だって。今日もお仕事あるんだろ?」

払われた手でもう一度ソーマの体を揺すって声を掛ける。

漸く目が覚めたのか、薄らとソーマの目が開かれた。

しばらくぼうっと一点を見つめていた目が、驚いたように見開かれる。

リンドウに凭れかかっていた体が、勢いよく起こされた。

温もりが去って、何となく寂しいと思う。

そんなことは表に出さずに、驚いたようにリンドウを見つめているソーマに、「おはよう」と声を掛けた。

「ああ」という短い返事が返って来て、それきりソーマは黙り込む。

起きた時の状況に戸惑って、何を言えばいいのか分からないんだろうなとリンドウは思っていた。

別に何も言う必要もないし、今更だ。

まあ、こんなに密着した状態で眠ったのは、ソーマが子供の頃以来だが、それでも初めてって訳じゃあない。

なのに、そんな反応をされると――逆に困るとリンドウは思う。

同じ部屋で眠ったことなど、何度もあるのだから。

「食堂に行くぞ」

「……ああ」

声を掛ければやっとソーマは動き出す。

ソーマが着いて来ている事を確認して、リンドウは部屋を後にした。

                     ■ ■ ■

ソーマと共に部屋を出ると、丁度リーダーも部屋を出て来る。

ソーマの部屋から出て来たリンドウとソーマをみて、驚いたように目を見開いた。

リンドウとソーマを交互にしばらく見て、ユウトは近づいてきてリンドウの腕を掴む。

そのまま自動販売機のある辺りまで引っ張って行った。

怪訝そうにそんな二人をソーマは見ている。

だが、ソーマはそこで待っていろとユウトに言われた為、仕方なく待っていることにした。

ソーマに聞こえないように小声で、ユウトはリンドウに話し掛ける。

「リンドウさん」

「なんだ」

「……ソーマの部屋から出て来たって事は、とうとう我慢出来ずに――」

「お前ねえ。俺をなんだと思ってるんだ?」

深い溜息を吐いて、そう問う。

「ソーマが自覚した可能性と、リンドウさんの我慢が限界に達した可能性の両方を考えたら、リンドウさんの我慢が限界に達した可能性の方があり得ますから」

「……まあ、確かになあ」

「じゃあ、やっぱり」

「違うっての。ちょっと色々あってな。ソーマの部屋にいただけだ」

「……なんだ、残念」

「お前なあ」

心底残念そうに言われて、リンドウは再び溜息を吐き出す。

そもそも全然関係ない第三者が気付いていて、何でソーマは気付かないのかと思えば、本当に溜息しか出ない。

「言えば良いじゃないですか」

「何て言えばいいんだよ」

「それは、自分で考えて下さいよ」

それじゃあ、と言ってさっさとエレベーターに乗り込むユウトを眺めて、もう一度リンドウは溜息を吐き出す。

ふと振り返れば、ソーマがかなり不機嫌な様子でこちらを見ていた。

いやだから、そんな反応をするなら自覚してくれって、とリンドウは思う。

こっちに来いと手招きすれば、僅かに躊躇ってからソーマがこちらに歩いて来る。

傍まで来たソーマを促して、リンドウも食堂へと行く為にエレベーターに乗った。

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第三者と言っても、コウタくん辺りは気付かない気がしますけどね、こういう事。

他は誰なら気付くかなあ。

現時点では、主人公のみですかね。

リンドウさんに命令されましたからねえ、なら気付くでしょう、うん。

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