エイプリルフール

エイプリルフール用のネタがあったんですが、ちょっと体調を崩しまして。

短編として上げる事が出来ませんので、こちらで簡単に。

神喰、リンソマです。

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今この時間のみ、任務が入っていないソーマは、自室を出てエントランスに向かう為にエレベーターへと向かう。

以前ならばなかった事だが、今は任務への同行を頼まれることも多い為、任務がない時でもエントランスに居る事が多くなっていた。

自室に居ても、携帯端末で呼ばれるのならば、最初からエントランスに居た方が良い。

そう思いながらエレベーターが下りて来るのを待つ。

エレベーターの扉が開き、乗ろうとしたのとほぼ同時に、中から出て来た人物に、制された。

「おい、リンドウ」

そのまま、ソーマをソーマの自室の方へと引っ張って行くリンドウの名を、ソーマは呼ぶ。

「任務ないんだろ? ちょっとだけ付き合えって」

言いながらソーマの部屋の鍵を開けて、中へと入る。

ソーマの意思など全く聞くつもりもないその態度に、溜息を吐きだし、仕方なくソーマも自室へと入った。

「なあ、ソーマ。お前、俺の事どう思ってる?」

ソーマが自室に入り、扉を閉めた途端にリンドウが問う。

行き成り何を言うんだと思いリンドウを見れば、意外にも真剣な表情をしたリンドウが居て、戸惑う。

真意は全く見えない。

だが、いつものように答えるのは何となく躊躇われて、かと言ってはぐらかす事も出来ずに、仕方なく言葉を紡ぐ。

「別に……嫌いじゃ、ねえ」

それだけ言って視線をそらせば、ガシっと勢いよく肩を掴まれて、アラガミ化した手で容赦なく人の肩を掴むんじゃねえと思いつつ、痛みに眉をひそめる。

「ソーマ、本当か? 今言った言葉は本当なんだよな?」

「あ? ああ」

訳が分からないと思いつつも、勢いに押されて答える。

『何だって今日に限ってそんな……』とかなんとか、リンドウがぶつぶつ呟く声が聞こえて来るが、何が今日に限ってなのかさっぱり分からない。

戻って来てからのリンドウは、時々不安にかられる事があるらしく。

いや、以前もあったのだろうが、そう言った事を見せた事が殆どなかったのだ。

だが、戻って来てからは時々ではあるが、そんなリンドウを見る事がある。

だから、今回もそれだと思っていたのだが、どうやら違うらしい。

違うなら素直に答えてやる必要はなかったと思うが、今更だ。

「何なんだ、一体」

「お前、今日が何の日か知らないのか?」

「今日? 4月1日だろ」

「だから、エイプリルフールだろ」

「……」

「お前がいつもみたいに、お前なんか嫌いだ、って答えたら、エイプリルフールだって言うつもりだったのに。今日に限って素直に答えるんだもんな」

残念そうに、けれどどことなく嬉しそうに言うリンドウを見て、ソーマは呆れたように溜息を吐き出す。

それだけの為に、あんなに真剣な顔をしていたのかと思えば、溜息しか出なかった。

「用事はそれだけか」

「ん? ああ」

「なら、俺は行く」

「ちょっと待て!」

「何だ」

「任務ないんだろ?」

「どうせ呼びだされるなら、エントランスに居た方がいい」

「無視しろってたまには」

「そういう訳には――」

そう言い掛けた途端に、ソーマの携帯端末が鳴り響く。

やっぱり、と思いつつ手を伸ばせば、何故かソーマよりも先に、リンドウがソーマの携帯端末を掴んでいた。

そしてそのまま端末の電源を落す。

何をすると言い掛けたソーマを制して、リンドウは携帯端末をソファの方へと放り投げた。

「付き合えって言っただろ?」

「だから、用事は終わったんだろ」

「終わってないんだよ」

「はあ?」

訝しげな声をあげるソーマを無視して、リンドウはソーマを抱え込むようにしてベッドの端に腰を下ろす。

後ろから抱え込まれるような状態が居心地が悪くて、だがしっかりと回されている腕は、ソーマを拘束していて離してくれそうにない。

――時間があれば、このまま……。

とかなんとか物騒な言葉が背後から聞こえて来るが、どうやら何かをするつもりはないらしい事は分かり、仕方なく大人しくしている事にする。

というよりはもう、抗うのが面倒なだけだったりするのだが。

たまには良いかとも思う。

4月1日の、ほんの僅かな休息の時間の出来ごと。

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纏まらなかったような気がしますが、これが限界です。

熱に浮かされた頭で書くと、甘くなるのかもしれないと思ったり。

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