もしもの話し

書いてる内容について色々考えている時に、時々全然関係ない会話を、キャラ達が初めてくれる事があります。

今、雨関連の神喰の話を書いてるんですが。

そんな中全然関係ない会話を始めてくれるんですよね、全く。

リンドウさんが戻ってきた後の話しですね。

取り敢えず投下していきます。

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もしも――アラガミなんてものが現れなかったらソーマはフェンリルの重役の息子として身の回りの世話をしてくれる人なんか居たのかもなあ。

本日休日のソーマの部屋に勝手に押しかけて来て寛いでいるリンドウが、突然何の脈絡もなく、そんな呟きを落した。

コウタから押しつけられた「バカラリー」を見る気になれなかったソーマは、リーダーからあまり面白くなかったけどと前置きされて渡された本を読んでいた。

確かに面白くなかったため、集中力が途切れていた所に、先程のリンドウの呟きが聞こえて来て、ソーマの意識は完全に本からそれる。

音を立てて本を閉じて、ソーマは呆れたような口調で言葉を紡いだ。

「行き成り何訳の分からねえ事言い出すんだ」

「ん? いや何となくな。もしアラガミなんてものが居なかったら――」

「俺は存在しなかったかもな」

リンドウの言葉を遮って、静かに告げた言葉にリンドウの纏う雰囲気が変わる。

自分の存在そのものを否定するようなソーマの物言いがどうやら気に入らなかったらしい。

何故自分の事でこの男はこんな反応をするんだと思いながら、ソーマは溜息を吐きだして言葉を紡いだ。

「アラガミの研究をしていたから、出会ったんだろ」

そう、研究者としてあの二人は出会ったのだ。

確かに、アラガミがいなかったら、ソーマは自分の出生について悩む事もなかっただろう。

幼いころから研究対象として研究所で過ごす事も、なかった。

だが、ソーマの父親と母親はアラガミの研究をしていたからこそ出会ったのだ。

アラガミが居なかったら、ソーマの存在自体がなかった可能性が高い。

それに――。

「アラガミが居なかったら、リンドウに会う事もなかっただろうな」

「あー、それは困るなあ」

「なら、そんなくだらねえ事言ってないでさっさと任務に行け」

「呼び出されたらな」

そう言ったきりこの部屋から出て行く様子のないリンドウを見て、ソーマは溜息を吐き出す。

もしも……そう思った事が一度もなかったとは言わない。

だが今は――。

「――っ、」

確かにソファに座っていたはずのリンドウが、いつの間にかベッドに腰かけているソーマの隣にいて。

突然抱き締められて、ソーマは息を呑む。

何するんだ、と言おうとした瞬間、聞こえて来た言葉にソーマは動きを止めた。

「俺はソーマが此処に居れば、何でもいいや」

動きを止めたソーマを、リンドウはしっかりと抱き締めて満足気に笑う。

次の瞬間、腕の中のソーマが動いて、思いっきり殴られた。

ベッドから落ちたリンドウは、勢い良く部屋を出て行くソーマを見送って、苦笑した。

ソーマの顔が赤かったのは見間違いじゃないだろう。

照れ隠しだと分かっているが、思いっきり殴らなくてもと思う。

立ち上がりベッドへと座りなおして思う。

先程言ったことは本心だった。

一度手放したからこそ、思う。

アラガミが居なければ、そう思ったことは一度や二度じゃない。

自分の力が及ばず助けられなかった命はいくつもある。

その度に、アラガミなんて居なければ、そう思った。

ソーマの事にしたってそうだ。

アラガミが居なければ、ソーマは普通に両親の愛情を受けて育っただろう。

半分アラガミだなんて状態で生まれて来ることもなかったはずだ。

だがそれでも――アラガミが居ようが居まいが、どんな世界だろうが、己の傍らにソーマの存在があればそれでいいと思う。

「そんな事言えばまた殴られるだろうな」

そう呟いて、リンドウはベッドへと横になり目を閉じた。

リンドウの携帯端末が鳴っても応答がなく、仕方なくソーマが自室へと戻って寝ているリンドウを叩き起こすのはもう少し後の話し。

寝ぼけて、リンドウを起こすソーマを抱き寄せて殴られるのもまた、もう少し後の話だった。

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あれ? 脳内会話から何か外れたぞ。

もしもアラガミが居なかったら、ソーマはあんな悩みを抱えることはなかったでしょう。

でも、アラガミが居なかったら、支部長とソーマの母親が出会う事さえなかったかもしれない。

そして当然ですが、リンドウさんとソーマが出会う事も、なかったでしょう。

自分達の日常にも当てはまりますが、たった一つ何かが変わっただけで、今の自分の生活ってのが変わってるかもしれないんですよね。

今自分の傍に居る人に出会えなかったかもしれない。

脳内会話から、そんな事を思ってみたりしました。

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