幻水で小ネタ上げるの初めてだ。
二人旅の途中の一こま。
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先日請け負った仕事の際に貰った地図を広げ、カイルは何事か書きこみながら言葉を紡ぐ。
「ゲオルグ殿。明日はどっちに行きます?」
「……」
何も答えずに待っていれば、地図を持ってカイルが近づいてくる。
宿の一室、後は寝るだけという状況での事だった。
指さしながら言葉を紡ぐ。
「こっちに行くと大きな街があるみたいです。で、こっちだと山に入っちゃうみたいですね」
「お前はどっちに行きたいんだ」
「オレは、しばらく宿に泊まるのが続いたから野宿でもいいかなって」
だから、こっち。と指差したのは山へと入ると先程カイルが説明した方。
独りで旅をしていた時も、地図を見て行き先を決めると言う事を殆どした事がないゲオルグは、どっちでもいいと思っていた。
「お前が行きたい方で良い」
「また、ゲオルグ殿はそう言う。本当に気の向くままに旅をしてたんだなってのが良く分かりましたよ」
「何度もそう言ってるだろ」
「そうですけどね。普通地図くらい見ません?」
「見ないな」
そう言うと思ったと言ってカイルは笑う。
何気ないやり取り。
けれど、こんなやり取りに救われると思う事は多々あった。
「じゃあ、こっちで良いですね」
「ああ」
「しばらく野宿になりそうですから、必要な物をちゃんと買って行かないと」
「そうだな」
そう返せば何故かカイルが溜息を吐く。
「分かってはいるんですけど」
「なんだ」
「ゲオルグ殿って、庇護対象の相手にはそれなりに愛想良く対応するのに、そうじゃないとホント、無愛想ですよね」
「そうか?」
「自覚ないんですか?」
そう言ってカイルは微かに笑う。
「俺の分までお前が愛想振りまいてるから良いだろ」
「振りまいてるって何ですか。まあ、良いんですけどね」
そう言って笑うカイルに救われていると言ったなら、一体どんな顔をするだろうかと思う。
独りで旅をしていたなら得られなかったもの。
地図をたたみ荷物の中にしまったカイルが再び近づいてくる。
思わず手を伸ばして、その存在を引き寄せた。
相変わらず突然だと文句を言うカイルを、ただ無言で抱きしめる。
そんなゲオルグ殿が好きなんだから仕方ないのだと笑うカイルに癒される。
その存在があるから今己はこうして此処に居られるのだと、改めて実感していた。
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仕方ないとは言え女王を手に掛けてしまったゲオルグを癒せるのって、カイルくらいだろうな、と。
いつも思うんです。
カイルは適当に見えてそうじゃないですからね。
この二人もやっぱり好きですね。
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